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津島佑子『逢魔物語』

黄昏の薄闇に浮かぶ、異形。灼けついた愛憎の果て、陰惨に昇る、情念に身を焦がし、横たわる闇の慕わしさに、惑い、立ち竦むものたち。自らの在るべき場所こそが、自らの生きるべき場所こそが、僅かに温かな、愛着と同時に、渇き、恐れる心の荒涼を、癒えることのない、傷みを、広げ、見せつける。安らぎを求め、縋り付く、性愛。だが、不安定な交歓は、かえって、逃げ場のない、自らの生を、思い知らせるだけ。互いの性を求め合う、交わりにさえ、救われることはないと、現実からは、逃れることが出来ないと、知っているからこそ、熱情への執着と、在るべきそこへの愛着は、やがて、消え去ることのない、葛藤を生み落とし、苦しみに喘ぐものたちを、蠱惑的な闇へと、誘う。

鮮烈に残る、異形と変わり行くものの、愚かしさ、凄艶さ。自分一人だけで、子どもたちを見つめて生きていかなければならない、現実への、怯え。自らの足下に開いた穴の中に、子どもたちと共に、転がり落ちていくことが恐ろしくて、子どもたちがいずれ、自らを踏み越えて、穴を出て行ってしまうことも、自分一人だけが、その中に残されることも、恐ろしくて。繰り返す逢瀬に覚える安堵、それでもやはり、子どもたちを手離すことは出来ず、漂う。魔を秘めた闇の中でのみ、せめて人をやめ、人であることをやめ、自ら異形と化したものの顔に浮かぶ、歓喜。おぞましくも、この上なく、愛おしい。

もがき続ける心に触れる、息苦しさ。踏みとどまるものの、痛ましい、懸命さ。人を異形の姿へと変える、苦しみの忌まわしさ、闇の妖しさ。黄昏の薄闇に満ちる、寂寥感。不穏を孕んだ静寂、魅入り、堪らずに寄り添う。
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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あげこ

Author:あげこ
あげこ
女、1987年生まれ

読書感想中心。
矢川澄子、幸田文、森茉莉、武田百合子、津島佑子、笙野頼子、河野多恵子、岡本かの子、野上弥生子、皆川博子、津村節子、原田康子、村田喜代子、高樹のぶ子、高橋たか子、倉橋由美子、久生十蘭、室生犀星、武田泰淳、獅子文六…愛しています。

どうぞよろしくお願いします。
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