スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

時折ふと思い出す、近しい悪意、残酷さに満ちた、津村節子の短編いくつか

『葬女』
数々の葬儀、死者と、死者を弔う側のものたちの繋がりに見える、人間が無意識に秘めた残酷さへの、蟠り、濁る、思い。死者との繋がりが希薄であれば、哀しみや憤りを覚えるが、しかし、同時に生あるものたちの惨さ、身勝手さは酷く身近に存在するもののように思え、ぞっとする。身に覚えのある狡猾さ、抉るような痛みを、言葉の端正さが刻む。

『光の海』
自分本位のまま、老いてなお、尽くすことを強いる夫、子どもたちの罪なき冷淡さが、突き刺さる。自らの幸せを守るため、老いた親を見放す子どもたち。これ以上は、抱えられぬと。それぞれ家庭を持ち、手一杯であると。母親たちはそれを、諦めにも似た穏やかさで、受け入れる。現実を認めぬ限り、救いはなく、夢の在る道を自ら探り、羽ばたくほか、ないのだから。重苦しさを祓う、晴れやかな選択に、後ろ暗さを隠すよう、縋り付く。

「蟷螂」
屈辱と苦難の果て、一人の女性が露わにした、浅ましい、素顔。醜く、冷酷な相貌、だがそれは、悪意を以って、浮かべたものとは違う。己が身を守るため、自らの危機に瀕して放たれた、無自覚の、したたかさ。例えそれが、鬱積した苦しみより生まれ出でたものであったとしても、その判断は、女性が意図的に下したものではない。追い詰められた誰もが取り得る、無自覚の選択。隠し続ける本性を、平然と、だからこそ、強い、視線に暴かれ、冷酷な素顔の、近しさ、慕わしさに、打ちのめされる。
スポンサーサイト

テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

あげこ

Author:あげこ
あげこ
女、1987年生まれ

読書感想中心。
矢川澄子、幸田文、森茉莉、武田百合子、津島佑子、笙野頼子、河野多恵子、岡本かの子、野上弥生子、皆川博子、津村節子、原田康子、村田喜代子、高樹のぶ子、高橋たか子、倉橋由美子、久生十蘭、室生犀星、武田泰淳、獅子文六…愛しています。

どうぞよろしくお願いします。
当ブログはリンクフリーであります。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メッセージ:

ランキング

FC2Blog Ranking

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。