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津島佑子『葎の母』

黒々と血を流し、滲み出た膿が濁す傷口を、どこか満足そうに見つめる。痛みには、より強い痛みを。傷口は庇わず、剥き出しのまま、晒す。まるで自らの内に蠢き続けるものたちの深さを、確かめるかのように。去り行くことを許さず、息づかせた陰翳を浄化し、薄れさせて行くことさえ、自らに拒むかのように。薄闇にこそ、救いはあると、母は頑なに、とどまり続ける。
死者を過去に。憤りを、憎しみを淡い陰に。決して昇華させはしない。母親というものの、その存在の重さから逃れようと、娘は家を、飛び出した。離れてなお、目を背けてなお、つきまとう、母の痛み。近づくことさえ躊躇われるほどに、静かに、陰鬱に、在り続ける、葎の家。だが、自らもまた、母親になることを選んだ時、男に対する執着、性愛への貪欲さはあれど、父親という存在を要さぬまま、自らと子どもの間に、父親という存在を必要としない自らのまま、母親になろうとした時、母の与える痛みは、自身にとって、快い慰撫へと、変わっていた。
それは、逃げ出さず、佇み続ける母への、苦しみより、傷口より目を逸らすことを知らぬ、母への共鳴か。棘が刺さる痛みこそ、何よりも心地よい安堵。甘さのない救い、だがその不器用なひたむきさにこそ、心惹かれる。

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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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あげこ

Author:あげこ
あげこ
女、1987年生まれ

読書感想中心。
矢川澄子、幸田文、森茉莉、武田百合子、津島佑子、笙野頼子、河野多恵子、岡本かの子、野上弥生子、皆川博子、津村節子、原田康子、村田喜代子、高樹のぶ子、高橋たか子、倉橋由美子、久生十蘭、室生犀星、武田泰淳、獅子文六…愛しています。

どうぞよろしくお願いします。
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