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煮詰めた生の、愛しき雑多味 村田喜代子の長編小説の記録①

『あなたと共に逝きましょう』

夫の病を機に見つめ直す、当たり前の日常と、夫婦の関係。熟年夫婦の共有する時間、互いが当然のものとして、共有する生活は、穏やかなひと時と、軽い緊迫感を秘めた局面の、繰り返し。それが当たり前となっているからこそ、平坦であると感じるだけで、本当は意外なほど凹凸ある日常の、滑らかではない、ザラザラとした手触り、そして、自らと伴侶に迫り来る老いさえ、どこか他人事のように構えていた鈍感さが、ひどく生々しい。
相手がどういう人間であったか、それすら忘れてしまうほどに、共に在ることが、当然となっていた二人。相手を見つめ直す、契機ともなった。だが、変化など、訪れはしない。闘病に寄り添う日々は、彼女に、最早最後まで夫と添い遂げるほかのない、自らの心を、思い知らせるだけ。
生還した夫の身体に覚える違和感。自分だけが取り残されてしまったと、くすぶる不満。置いていかれてしまったと、募る憤り。共に逝こうとしていたからこそ、自らにも手が付けられない具合に、どうしようもなく、心はほつれてしまった。破裂する瞬間を逃し、行き場を失くした思い。喜びよりも、安堵よりも強く、不可思議な憤懣、戸惑いを訴える心の様相は、切実で好ましく、馴染みやすいもののように感じられる。言いようのない怒り、悲しみにほつれた心もまた、癒えた夫への、違和感が薄れるにつれて、ゆっくりと、何とはなしに、縫い合わされて行くのだろう。
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

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あげこ

Author:あげこ
あげこ
女、1987年生まれ

読書感想中心。
矢川澄子、幸田文、森茉莉、武田百合子、津島佑子、笙野頼子、河野多恵子、岡本かの子、野上弥生子、皆川博子、津村節子、原田康子、村田喜代子、高樹のぶ子、高橋たか子、倉橋由美子、久生十蘭、室生犀星、武田泰淳、獅子文六…愛しています。

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