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松浦理英子『セバスチャン』『奇貨』

『セバスチャン』
性を用いる交わりも、性を満たす悦びも、必要とはしない。ただ、自らの世界、そのものである存在に、捩じ伏せられ、従属し、性の備わらぬ、モノのように、扱われることを望む。自らの肉体が有する、性への無関心。性を不要とする、愉悦への傾倒。自らの形を、既存の枠組みの内に、適合させることが出来ぬものの危うさ。異なる性を持つものとの交流に、思い知らされる、自らの歪み。失った世界の大きさ、身をもぎ取られるような哀しみ。避けられぬ傷の惨さに、消えることのない、生き辛さ、息苦しさに、鋭く、怜悧な哀感が、奔り、胸を締め付ける。

『奇貨』
何とも不器用で、生真面目。自らの激情を、濁り、滾る感情を、発し、そのままにはしておかない、友への嫉妬。それらを掴み、放出する術を得た、喜びへの羨望。それは、処理することなく、その形を見極めることさえもなく、ただ見過ごしてきたものたちとの、後ろ暗い、邂逅であるかのよう。 自らに対し、既存、主流の枠組みの中におさまらぬ、自らの性と、生に対し、生真面目であり続けるが故に、苦しみ、悩み、迷うもの。ふつふつと、沸き起こる思いに、触れたくない、塊にまで、逃げず、目一杯向き合う。その不器用さ、その滑稽さ、可笑しくて、気恥ずかしくて、何とも愛おしい。
松浦理英子は『セバスチャン』、『ナチュラル・ウーマン』、『葬儀の日』、『奇貨』、『裏ヴァージョン』が、好きです。この並び順通り。もうやめろよ…と思うほど、張り詰めていて、切実で、痛々しくて、危うくて、時にはらはらしてしまうほどの、不器用さ、生真面目さ。鋭いのに不恰好、崩れ落ちそうなのに、硬い。窓も、排気口もなく、換気する術さえない空間の、息苦しさ、濁りの中を、這うようにして、生きるものたち。その苦しみを、その悦びを描く、松浦理英子作品の、不器用な生真面目さが、自分は好きなのであります。
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

あげこ

Author:あげこ
あげこ
女、1987年生まれ

読書感想中心。
矢川澄子、幸田文、森茉莉、武田百合子、津島佑子、笙野頼子、河野多恵子、岡本かの子、野上弥生子、皆川博子、津村節子、原田康子、村田喜代子、高樹のぶ子、高橋たか子、倉橋由美子、久生十蘭、室生犀星、武田泰淳、獅子文六…愛しています。

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